美容にも健康にも良いと言われるトマト。
毎日食べたい野菜の一つです。
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ナス科のトマト属。
旬は6月~8月。
しかし本来トマトは高温多湿に向いていないため
味的の旬は春~初夏と秋だそうです。
■原産地
南アメリカのアンデス山脈高原。
16世紀に唐辛子やジャガイモと一緒にヨーロッパに持ち込まれたが
当時は毒があると思われ、観賞用であった。
18世紀に食用として広まり、日本へは17世紀に伝わった。
当初は観賞用であったが、食用となったのは明治以降。
世界にはトマトの種類が約8000種類以上もあり
日本では約190種類の品種があるそうです。
■成分と効能
・βカロテン
カロテンとは・・・
天然の植物や動物が持つ、黄、橙、赤色の脂溶性色素の総称をカロテノイドという。
そのうちの炭素と水素から成る化合物をカロテンといい
α-カロテン β-カロテン γ-カロテン リコピンなどがある。
動物は体内で合成することが出来ないため、植物から摂取する必要がある。
βカロテンは緑黄色野菜に多く含まれ
小腸粘膜上皮細胞でビタミンA(レチノール)に変換されるため、プロビタミンAという。
ビタミンAは脂質と一緒に小腸で胆汁酸にミセルという油の粒に変換され
小腸繊毛から吸収される。
その後、小腸上皮細胞内でエステル化され
カイロミクロン(脂肪を運搬する脂肪とタンパク質の複合体)に取り込まれ
リンパ管から肝臓へ送られる。
肝臓でレチノールエステルとして貯蔵されるが
末梢で必要な場合にレチノールに加水分解され
肝臓で合成されるレチノール結合蛋白質(retinol-binding protein)と結合し
標的の臓器に運ばれる。
①皮膚・粘膜の強化
皮膚は病原体や紫外線などから生体を守る最初の防御壁である。
皮膚は表皮と真皮からなり、皮膚表皮のバリア機能は2通りある。
角層バリア機能とタイトジャンクションバリア機能である。
角層バリア機能とは、ケラチノサイト(表皮角化細胞)が角化(分化)していく
過程で作られるバリア機能である。
表皮の一番下層では、ケラチノサイトが基底層で約2週間に一度細胞分裂し
1個は基底層に残り、もう1個はケラチンというタンパク質を形成しながら
有棘細胞→顆粒細胞と約4週間かけて一番上層の角質細胞になる。
ここで約2週間、皮膚を守り最終的には垢となって剥がれ落ちる。
顆粒層から角質層にかけては変化が激しく、この時に核や細胞内小器官が消えて
細胞内にケラチンパターンが形成され、生きた細胞から死んだ細胞になる。
この角化のスピードは速くても遅くても、皮膚にトラブルを引き起こす。
角化は複雑でその制御もまた、細かいシステムによってなされている。
ビタミンAはケラチノサイトの核内にある受容体に結合して、角化を抑制している。
タイトジャンクションバリア機能とは、ランゲルハンス細胞が顆粒層にあるバリアジャンクションと
連携して、皮膚に侵入してきた異物に対応するという機能である。
アトピー性皮膚炎、皮膚アレルギー、食物アレルギー、喘息などの予防や治療も可能になると
期待されている研究である。
粘膜上皮細胞は粘液で被われていて、病原体が侵入すると粘液はこれを洗い流し防御している。
粘膜や粘液の成分であるコンドロイチン硫酸はビタミンAがないと生成されない。
粘液中に分泌される分泌型IgA抗体は、侵入しようとする病原体に結合し、侵入を阻止する。
分泌型IgA抗体は、涙、唾液、尿などに多く分泌されている。
②抗酸化作用
βカロテンは体内で発生する活性酸素を消去する。
活性酸素には種類があり、それぞれに対応する抗酸化物質があり
反応する場所も別である。
βカロテンが消去する活性酸素はヒドロキシルラジカル、一重項酸素である。
一重項酸素は紫外線や放射線を浴びると発生する。
ビタミンCやビタミンEは一重項酸素には効果がない。
抗酸化には抗酸化ビタミンのビタミンC、ビタミンE、βカロテン
抗酸化酵素の亜鉛、鉄、銅、マンガン、セレニウム
抗酸化物質のコエンザイムQ10、フラボノイド、カロテノイド
などが相互に協力しあっているので、偏らないよう摂取するのが望ましい。
③免疫力アップ
腸管免疫
体内における免疫細胞の約50%~70%が腸管に存在する。
これは、腸管内が体の内部であり外部でもあることから
常に病原体の侵入に晒されているという点にある。
口、喉、食道、胃、小腸、大腸は摂取した食物を消化液や酵素で分解し
非自己であるということを消し、体内に吸収されることを許すが
この時に侵入してきた病原体は小腸の管腔面に接しているパイエル板
(リンパ小節でリンパ球が多く存在するところ)で非自己と認識され、攻撃の対象とされる。
パイエル板に存在するM細胞は侵入してきた病原体を捕まえて
下にいるマクロファージや樹状細胞に輸送する。
マクロファージや樹状細胞はこの病原体を貪食、分解し
その抗原の断片をヘルパーT細胞に提示する。
ヘルパーT細胞は、B細胞にIgA抗体を作るよう指令を出す。
活性化されたB細胞はパイエル板を出て腸間膜リンパ節などで増殖する。
増殖したB細胞はリンパに乗って流れ、血液循環し全身を巡る。
最後には、各組織の粘膜や腸管粘膜に戻って粘膜固有層で形質細胞に変化して
IgA抗体を分泌する。
ビタミンAはこのIgA抗体を亢進する。
④視覚の調整
光は角膜、瞳孔、水晶体、硝子体を通過し、眼底にある網膜で受容される。
網膜には光受容に特化した視細胞があり、明暗を認識する桿体細胞と色を感じる錐体細胞である。
桿体細胞には視物質と呼ばれるタンパク質、ロドプシンが含まれている。
ロドプシンはビタミンA(レチナール)とオプシン(タンパク質)が結合してできている。
レチナールが不足すると、鳥目といわれる夜盲症になる。
・リコピン
カルテノイドの1つで、脂溶性の赤色色素。
βカロテンと違い、体内でビタミンAには変換されない。
抗酸化作用
活性酸素は強い酸化力を持ち、その酸化力は生命維持に必要である。
例えば、体内に侵入してきた病原体は免疫細胞の白血球に活性酸素を吹きかけられ殺される。
肝臓では解毒作用に活性酸素の酸化力を利用している。
など、体を守るために利用され、余った分は酵素によって分解され無害になる。
しかし、酵素が分解しきれない過剰な活性酸素は血管を傷つけ、老化の原因となったり
タンパク質や脂質を酸化させ、DNAを傷つけ癌細胞を作ってしまう。
リコピンは活性酸素のペルオキシナイトライトを消去する。
活性酸素を過剰に発生させる原因には、タバコの煙、アルコール、紫外線、排気ガス
大気汚染、農薬、電磁波、ストレス、食品添加物などがある。
リコピンは悪玉コレステロール(LDL)の酸化を抑制するので、動脈硬化の予防にもなる。
また、リコピンは紫外線により皮膚で発生した、活性酸素を消去する。
メラニン生成に必要な酵素チロシナーゼの働きを抑制するので、シミの予防になる。
・ビタミンC
①コラーゲンの合成
タンパク質の1つであるコラーゲンの合成を手助けし、血管、皮膚、粘膜、骨を強化する。
食品に含まれるコラーゲンは、食べてもそのままでは体内でコラーゲンとして吸収されない。
コラーゲンに合成するには、同時にプロシンやリシンを含むタンパク質とビタミンCを
摂取しなければならない。
プロシン・・・動物の皮に含まれている。
リシン・・・牛乳・大豆・蕎麦・レバーに含まれている。
ビタミンC・・・野菜や果物に含まれている。
②免疫力アップ
風邪などを予防する。
免疫力に関与しているのが白血球で顆粒球・単球・リンパ球がある。
その内、顆粒球は好中球・好酸球・好塩基球の3つがある。
好中球・単球・・・主に細菌や異物を排除する。
好酸球・好塩基球・・・アレルギー反応に関与する。
リンパ球・・・ウイルスの排除、免疫反応の主役。
とそれぞれ重要な仕事を担っている。
ビタミンCは好中球の活性化をする。また、好中球が周りの健康な細胞も攻撃しないよう作用する。
③抗酸化作用
癌・動脈硬化・老化を防ぐ。
体内で酸素を利用すると、活性酸素が発生する。
この活性酸素が細胞を酸化させると癌や老化、生活習慣病になる。
ビタミンCは酸化されやすく、細胞が傷つく前に酸化されて、体を守る。
④血行促進
貧血・動脈硬化を防ぐ。
ビタミンCは鉄が腸管から吸収される際、吸収されやすい形に変える。
食物から摂取した鉄の吸収率は10%しかなく、ビタミンCの働きがないとさらに下がる。
コレステロールは細胞膜を形成する重要な脂質の一種。
その中でもLDL(悪玉コレステロール)は細胞にコレステロールを供給するが
増え過ぎると血管壁に入り込んで酸化され、この酸化悪玉コレステロールが溜まると
動脈硬化の原因となることがある。
ビタミンCは抗酸化作用があるので、これを防ぐ。
⑤抗ストレス
ストレスに強くなる。
ストレスを受けると副腎から抗ストレスホルモンが分泌され、身を守ろうとする。
それには2通りある。
・SAM系(sympathetic-adrenal-medullary axis)
大脳辺縁系から視床下部に伝達され、交感神経節及び副腎髄質からノルアドレナリン、アドレナリンが分泌される。
闘争・逃走反応=緊急反応で交感神経優位の防御反応
闘争・逃走反応とは動物が外敵に遭遇する時には、みずからの生命を守るための原始的な自己防衛本能
身を守るために。敵が弱そうであれば闘争し、強そうであれば逃走する。
交感神経緊張が増加し、心拍数が増加し、血圧を上昇し、呼吸を促進し、瞳孔が散瞳する。
・HPA系(hypothalamic-pituitary-adrenal axis)
大脳辺縁系から視床下部伝達され、下垂体を介して副腎皮質からコルチゾールが分泌される。
フリージング(すくみ反応)=受動的ストレス反応(行動抑制反応)
ストレス刺激によりじっと動かなくなり、外部に対して反応しなくなる。
血圧も心拍も低下する。
コルチゾールの作用は血糖値の上昇、脂肪分解促進、抗ストレス作用、抗炎症作用、
免疫抑制作用であり、長期戦に備えての反応とみることができる。
そして、コルチゾールはビタミンCとコレステロールから作られているので
ビタミンCが不足するとこれらの対応が出来なくなる。
・ビタミンE
脂溶性のビタミンで天然のものではトコフェロールとトコトリエノールに分けられ
それぞれ、α-、β-、γ-、δ-の4種類がある。
このうち、生物活性が一番高いのはα-トコフェロールで
ビタミンEというとトコフェロールの事を指す。
ビタミンEは体内で、胆汁酸によりミセル(親水性の小さな粒)化され小腸から吸収される。
小腸上皮細胞から吸収されたビタミンEは、カイロミクロンとなり
リンパ管を通り、肝臓へ運ばれる。
肝臓ではトコフェロール結合タンパク質と結合して
超低密度リポタンパク質(VLDL)に取り込まれ、末梢の組織に輸送される。
①抗酸化作用
細胞膜を形成している不飽和脂肪酸(善玉)は活性酸素により酸化されやすい。
細胞膜が酸化されると、細胞内が傷つき老化が進み、癌細胞を作る。
ビタミンEは細胞膜に多く分布し、活性酸素に電子を渡し、自身が酸化されることで
不飽和脂肪酸が過酸化脂質になることを防ぐ。
ビタミンEラジカルとなったビタミンEはビタミンCから電子を貰うことで
またビタミンEとしての働きが出来る。
ビタミンCはビタミンCラジカルとなり、水溶性なので分解され尿として排出される。
こうしたことから、ビタミンEとビタミンCは一緒に摂取するとよい。
②血行促進
コレステロールは善玉コレステロール(HDL)と悪玉コレステロール(LDL)があるが
脂肪などの過剰摂取でLDLが増えると、活性酸素により酸化され酸化LDL=過酸化脂質が作られる。
酸化したLDLはマクロファージが貪食するが、処理しきれなくなるとマクロファージ内に溜まった
泡沫状の脂肪が泡沫細胞となり、粥状動脈硬化となって血管壁を厚くする。
ビタミンEはLDLの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防をする。
また、ビタミンEは赤血球の細胞膜にも存在し、酸化を防ぐ。
血液は血球(赤血球、白血球、血小板)という細胞成分と血漿という液体成分からできている。
毛細血管は非常に細いため、赤血球は形を変形させて血管内をスムーズに通過し
末端まで循環させている。
このため赤血球の変形態維持は非常に重要で、ビタミンEは赤血球の細胞膜の酸化を防ぎ
細胞膜を柔らかく保つことで血行を良くしている。
こうしたことから、肩こり、頭痛、冷え性などの血行不良に良いと言われている。
③ホルモンバランスを整える
性ホルモンの分泌は、脳の視床下部が司令を出すことで分泌される。
視床下部がゴナドトロビン放出ホルモンを分泌し、下垂体を刺激することで
下垂体からゴナドトロビン(性腺刺激ホルモン)が分泌させる。
性腺刺激ホルモンには卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)がある。
卵胞刺激ホルモンは卵巣内の卵胞を成熟させ、黄体化ホルモンは成熟した卵胞の排卵を促進させる。
卵胞は成熟するとエストロゲン(卵胞ホルモン)を放出し
排卵後に黄体となりプロゲステロン(黄体ホルモン)を放出する。
エストロゲンは卵子が受精した時に備えて子宮内膜を厚くする。
プロゲステロンは受精卵が子宮内膜に着床し、妊娠が継続するよう子宮内膜を柔らかくする。
妊娠しなかった場合は子宮内膜を排出する。
子宮内膜が排出されるとは月経が起こることで、血液中にこの2つのホルモン量が
減少していることが、視床下部に伝わると視床下部は、ゴナドトロビン放出ホルモンを
分泌させて下垂体を刺激し、ゴナドトロビンの放出を促す。
しかし、ビタミンEは下垂体や副腎などホルモン分泌臓器に多く存在していて
これが不足すると下垂体からのホルモン分泌機能が低下する。
すると、視床下部が指令を出してもホルモン量が増えず、指令を出し続け、混乱状態になる。
視床下部は自律神経のコントロールもしているので、自律神経の乱れも生じる。
ホルモンバランスが悪いことは、自律神経が乱れる原因の1つである。
・カリウム
細胞内の余分なナトリウムと水分を排出する。
そしてナトリウムが腎臓で再吸収されるのを防ぎ、尿としての排出を促す。
このように、カリウムはナトリウムによる血圧上昇を抑える作用があり
高血圧を予防し、手足の浮腫みを解消する。
日本人は、塩分としてナトリウムを摂りすぎるので、カリウム摂取を心掛けるとよい。
特にこの時期、大量に汗をかくとカリウムが汗と一緒に排出されてしまう。
カリウムが不足すると筋肉の痙攣や低カリウム血症が起こり
疲れやすく、夏バテの原因になるので注意。
・食物繊維
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類がある。
①水溶性食物繊維
植物の細胞の中の分泌物や貯蔵物質に含まれる。
水に溶けるとゲル状になり、糖の吸収を遅らせ、急激な血糖値の上昇を防ぐ。
腸内細菌による発酵で腸内が酸性化し、酸性環境は悪玉菌を抑える。
また、善玉菌のエサにもなるので、腸内環境を整える。
種類
ペクチン・・・熟した果物、野菜に多い。
グルコマンナン・・・こんにゃく。
アルギン酸、フコイダン・・・海藻類。
グアーガム・・・豆科の植物。
②不溶性食物繊維
植物の細胞壁を構成している成分で、水に溶けない。
腸管内で水分を吸収して膨れるため量が増え、腸壁を刺激し蠕動運動が盛んになる。
このため、便の排泄を促し、腸内の老廃物を排出する。
種類
セルロース・・・穀類、野菜、豆類、林檎、梨、ナッツ類に多い。
ヘミセルロース・・・海藻類、シリアル、無精製の穀類。
ペクチン・・・未熟な果物、野菜。
リグニン・・・ココア、豆類。
グルカン・・・キノコ類。
アガロース・・・紅藻類(テングサ、オゴノリ)寒天の主成分。
キチン・・・エビ、カニの殻。
・クエン酸
柑橘類や梅干しに含まれる酸味の成分。
①クエン酸回路
体内でエネルギーを作り出すクエン酸回路の構成成分。
オキサロ酢酸とアセチルCoAの反応で作られる。
このサイクルが上手く回らないとビルビン酸が乳酸になる。
血中の乳酸は血液を酸性にし、疲労の原因となる。
クエン酸は乳酸を消去し、血液を弱アルカリ性にし、疲労を回復させる。
②キレート作用
キレート作用とは、摂取されたミネラルが、酸化されてしまう前に包み込み吸収すること。
鉱物ミネラルは吸収が悪いが、クエン酸の持つキレート作用で吸収がよくなる。
クエン酸は活性酸素を直接攻撃する抗酸化物質(SOD)を活性化する働きがある。
③尿酸値を下げる
痛風の原因となる尿酸。
尿酸はプリン体が代謝されて作られる燃えカスで
新陳代謝や急激な運動などでATPエネルギーを大量に使った場合や
プリン体の多い食事の摂取などで作られる。
尿酸は酸性なので、アルカリ性には溶けやすい。
クエン酸は分解されるとアルカリ性になるため、血液はアルカリ性となる。
腎臓は血液をろ過して尿を作るので、血液が濃縮しやすく
尿酸は溶けて尿として体外に排出される。
女性より男性の方が痛風になりやすいのは、エストロゲンが尿酸の排出を促すためである。
トマトの栄養成分は抗酸化作用を促進させるものが多く
野菜の持つパワーは素晴らしいです。
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