恥骨筋 Pectineus
起始 恥骨櫛 恥骨筋膜
停止 恥骨筋線
支配神経 大腿神経 L2~3(ときに閉鎖神経の枝も受ける)
血管 内側大腿回旋動脈浅枝
作用 股関節内転 内旋 屈曲
遅筋:速筋(%) 50.0:50.0
筋連結 腸骨筋 内側広筋 外側広筋
□特徴
内転筋群の中で一番上部に位置している。
内転筋群ではあるが、内転の作用は小さい。
股関節内旋の作用は中殿筋、小殿筋、大内転筋に続き4番目に貢献度が高い。
股関節屈曲作用は大腰筋、腸骨筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋に続き5番目。
大腿神経と閉鎖神経の二重支配。
大腰筋と恥骨筋の間を内側大腿回旋動脈が通過。
DFL下前部に含まれる。
□TP
関連痛パターンは鼠径部および大腿上部前内側。
TPは恥骨結節の1横指外側。
突然の転倒、スポーツ障害、オートバイの運転、乗馬で損傷する。
内・外腹斜筋のTP関連痛は鼠径部まで及ぶので鑑別する。
薄筋 Gracilis
起始 恥骨結合外側縁
停止 脛骨上縁縫工筋付着部後方
支配神経 閉鎖神経 L2~4
血管 外陰部動脈 大腿深動脈 閉鎖動脈
作用 股関節内転・屈曲 膝関節屈曲 下腿の内旋
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 縫工筋 半腱様筋 長内転筋 短内転筋 大内転筋
□特徴
内転筋群の中で唯一の二関節筋。
縫工筋、半腱様筋と鵞足を形成。
鵞足の支配神経→縫工筋:大腿神経 薄筋:閉鎖神経 半腱様筋:脛骨神経
鵞足炎は鵞足部に圧痛があり、運動時に鵞足部に痛みがあるときに診断される。
鵞足炎では、どの筋肉が障害されているかを鑑別する。
薄筋は圧痛がないか?股関節外転、膝関節伸展で疼痛が誘発されないか?で判断する。
※鵞足炎
膝関節屈伸時に膝が内側に入る(外反)や膝から下を外旋させる動作で起こりやすい。
Ⅹ脚、過回内足でも発症されやすい。
□TP
関連痛パターンは大腿内側から膝関節内側で浅部に刺すような痛み。
TPは大腿内側上部に出現。
縫工筋の関連痛との鑑別。
短内転筋 Adductor brevis
起始 恥骨下枝
停止 恥骨筋線下半 大腿骨粗線内側唇
支配神経 閉鎖神経前枝 L2~4
血管 大腿深動脈筋枝 内側大腿回旋動脈深枝
作用 股関節内転・屈曲 股関節外旋位での内旋
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 小内転筋 薄筋 内側広筋
□特徴
恥骨筋と長内転筋に覆われ、後方には大内転筋がある。
長内転筋 Adductor longus
起始 恥骨結合前面と恥骨結節による三角形の面
停止 大腿骨粗線内側唇中部1/3
支配神経 閉鎖神経 L3~4
血管 内側大腿回旋動脈 閉鎖動脈
作用 股関節内転 股関節屈曲(屈曲90度で伸展作用になる)
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 恥骨筋 大内転筋 内側広筋 短内転筋 薄筋
□特徴
恥骨筋の下部、大内転筋の前部で表層に位置している。
大腿三角(別名:スカルパ三角)を構成。
※大腿三角:鼠径靭帯・長内転筋・縫工筋で構成される三角。
この三角の中を内側から大腿静脈・大腿動脈・大腿神経が走行する。
鼠径靭帯に沿う膨隆は鼠径ヘルニアを疑わせる。
大腿動脈は鼠径靭帯のほぼ中央の下を通っている。
正常では、大腿動脈の脈拍は強く打っているが、総腸骨動脈や外腸骨動脈が閉塞していると消失する。
大腿静脈、大腿神経は触れることが出来ない。
大腿三角部では、リンパ節の腫大がないかも調べる。
リンパ節の腫大は下肢から上行した感染の徴候か、骨盤の局所的な病変の徴候。
長内転筋は股関節を外転すると分りやすい。
股関節60度屈曲から、作用が屈曲から股関節伸展に変わる。
FFL、DFL下前部に含まれる。
歩行時の筋活動は足指が床面を蹴って推進力がかかる立脚終期に活発になる。
□TP
関連痛パターンは鼠径部、股関節内側と膝関節内側に出現する。
痛みは体重をかけたり、股関節を捻じったりすると増強する。
大内転筋 Adductor magnus
起始 坐骨下枝前面 坐骨結節下面
停止 大腿骨粗線内側唇の小転子から内側上顆・内側筋結節の間
支配神経 閉鎖神経 L3~4
血管 大腿深動脈 閉鎖動脈 内側大腿回旋動脈 膝窩動脈
作用 股関節内転 内旋 伸展
速筋:遅筋(%) 41.6:58.4
筋連結 短内転筋 大腿方形筋 長内転筋 半膜様筋 小内転筋 薄筋 外側広筋 内側広筋 中間広筋 大腿二頭筋短頭 半膜様筋 腓腹筋
□特徴
股関節内転筋群で最も大きく、内転作用は一番貢献している。
内転筋裂孔を形成。
※内転筋裂孔:大内転筋が裂かれてできた血管が通過する通路。大腿動静脈が通過する。
大腿動静脈はここを通過後、膝窩動静脈になる。絞扼されることは少ない。
ハンター管形成。
※ハンター管:大内転筋・長内転筋・内側広筋で形成される膜性の通路。伏在神経・大腿動静脈が通過する。
絞扼されると伏在神経領域の痛み。
伏在神経は知覚枝であり、しびれなどの知覚障害が起こる。
運動支配はないため、筋力低下や筋委縮はない。
筋スパズム、滑走性の低下に注意。
歩行時の筋活動は、踵が床面に着く遊脚終期に活発になる。
□TP
関連痛は、大腿前面内側から膝まで
TPは恥骨結節と大腿骨内側上顆の中線上。
腸腰筋の筋筋膜に異常があると腰や大腿前面に疼痛が現れることがある。多くの場合、腸腰筋を治療すればそれらの疼痛は解消するが、大腿前面に疼痛が残る場合大内転筋を治療して解決することがある。
小内転筋 Adductor minimus
起始 坐骨下枝・恥骨下枝
停止 大腿骨粗線内側唇上端・殿筋粗面
支配神経 閉鎖神経L3~4
作用 股関節内転 屈曲
大内転筋の恥骨下枝と坐骨̪枝から起こる上部筋束が分離独立している場合をいう。
外閉鎖筋 Obturator externus
起始 寛骨外面閉鎖孔縁・閉鎖膜
停止 転子窩
支配神経 閉鎖神経 L3~4
血管 閉鎖動脈 内側大腿回旋動脈
作用 股関節外旋 内転
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 内閉鎖筋 大腿方形筋 小殿筋 梨状筋 上双子筋 下双子筋 小内転筋 (股関節包を介して)大腰筋 小殿筋 恥骨筋 腸腰筋
□特徴
深層外旋六筋のうち、唯一の閉鎖神経支配。
閉鎖神経絞扼は大腿内側から膝関節内側までに痛みがでる。
閉鎖神経後枝(皮枝)が絞扼されるので、筋力低下はみられない。
内転筋群の筋力テスト
主動内転筋:長内転筋 閉鎖神経 L2,3,4
補助筋:短内転筋・大内転筋・恥骨筋・薄筋
歩行時、左右のブレを抑える。
外側から中殿筋。内側から内転筋群。