後頭下にある小さな筋群。
後頭骨、環椎、軸椎の間の関節を回転し伸展する。
脊柱起立筋や半棘筋よりも深層にある。
下位頸椎の複合された3つの動き(回旋、側屈、屈伸)の必要な動きを補強したり、不必要な動きを打ち消したりすることで、頭部の位置を決定する調整器の役割を果たす重要な筋群。
大後頭直筋 Rectus capitis posterior major
起始 軸椎棘突起
停止 後頭骨下項線
神経 後頭下神経
作用 両側:頭部伸展 片側:頭部を同側に回旋
上方に底辺を持つ三角形の形をしている。
筋は上方のやや外側後方に走る。
両側が同時に収縮すれば、上位頸椎上の頭部の伸展が起こり、大後頭直筋は環椎軸椎関節で関与する。
環軸関節において、回旋作用では大後頭直筋と下頭斜筋はがその側に頭部を回旋させる。
大後頭直筋は環椎後頭関節と環軸関節の両方において、頭部を回旋させる。
このことによって、他動的に反対側の大後頭直筋は伸張され、頭部を中間位に戻すように働く。
小後頭直筋 Rectus capitis posterior minor
起始 環椎後結節
停止 後頭骨下項線の内側1/3
神経 後頭下神経
作用 両側:頭部伸展 片側:頭部を同側に回旋
三角形を呈し、大後頭直筋よりも平らで小さく、深部にある。
正中線に接近しているため、側屈に対する影響は最も少ない。
筋は、上方やや外側で、大後頭直筋と比較しても、明らかにより後方斜めに走る。
これは、軸椎棘突起よりも環椎の後結節のほうが、いっそう深部にあるためである。
両側が同時に収縮すると上位頸椎上の頭部の伸展が起こり、小後頭直筋は環椎後頭関節において関与する。
下頭斜筋 Obliquus capitis inferior
起始 軸椎棘突起下縁
停止 環椎横突起後縁
神経 後頭下神経
作用 両側:頭部伸展 片側:頭部を同側に側屈 反対側に回旋
細長くて厚く、紡錘形の筋であり、大後頭直筋の下外側に位置する。
小後頭直筋間隙を横切る。
休息時や運動時の環軸関節の安定維持のために重要な役目をしている。
側方から見た時、環椎横突起を後方に引く。
すなわち、両側の下頭斜筋が同時に収縮すると、軸椎上の環椎を後方に引き伸展させる。
この関節を上から見た時、これらの筋は弓に対する弦のように見える。
両側の筋が収縮すれば、前方に軸椎を引くことになり、相対的に環椎は後方へ移動することになる。
このことにより、横靭帯の緊張は軽減され、歯突起が受動的に固定され、後方脱臼を防ぐことになる。
この筋の作用は、活動時における正中環軸関節の安定維持には必要欠くことのできないものである。
両側同時に収縮すれば、上位頸椎上の頭部の伸展が起こり、下頭斜筋は環軸関節で関与する。
回旋作用では下頭斜筋が収縮すれば、環軸関節においてのみ同側へ頭部を回旋させる。
軸椎の棘突起と環椎の横突起の間を対角線的に走っており、その筋が収縮すれば同側への環椎を回旋させ、その時、反対側の下頭斜筋は伸張されることになる。
その反対側の筋は頭部を中間位に戻すように働く。
上頭斜筋 Obliquus capitis superior
起始 環椎横突起
停止 後頭骨下項線外側1/3
神経 後頭下神経
作用 両側:頭部伸展 片側:頭部を同側に側屈 反対側に回旋
短く平たい三角形の筋で、環椎後頭関節の後方に位置する。
矢状面上を上後方に走っていて、小後頭直筋と平行、下頭斜筋と垂直に位置する。
両側が同時に収縮すれば、上位頸椎上の頭部の伸展が起こり、上頭斜筋は環椎後頭関節において関与する。
環椎後頭関節において、回旋作用では上頭斜筋が片側だけ作用すると反対側に頭部を回旋させる。
これによって、他動的に回旋させた側の下頭斜筋と小後頭筋は伸張されることになるがその結果、頭部を中間位に戻すように下頭斜筋と小後頭直筋が働く。