◆上肢帯の骨 Pectoral girdle
1 鎖骨 Clavicle
軽いS状を描く。
内側端を胸骨端といい、肥厚している。
外側端を肩峰端といい、上下に扁平になっている。
1肩峰端(→は肩峰関節)2円錐靱帯結節 3鎖骨下筋溝(鎖骨下筋が収まる溝)4肋鎖靱帯圧痕 5胸骨端(→は胸骨関節)6菱形靱帯線
2 肩甲骨 Scapula
上縁、内側縁、外側縁の3縁からなる三角形の扁平骨。
背側面は肩甲棘があり、その外側端は肩峰となって高くそびえている。
肩峰の内側面には鎖骨との関節面があり、これを肩鎖関節という。
上縁の外側端には前方に向かって鉤状の烏口突起が突出している。
上外側端は肥厚し、その外側面は皿状に浅くくぼんで関節窩という凹面をなしている。
上縁と烏口突起の基部との境には肩甲切痕という小さい切れ込みがある。
1肩峰角 2肩峰 3烏口突起 4下角 5棘下窩 6外側縁 7関節窩 8内側縁 9肩甲頚(および背側面上の棘関節切痕)10肩甲棘 11肩甲下窩 12上角 13上縁 14肩甲切痕 15棘上窩
◆上腕の骨 Arm bone
上腕骨 Humirus
長い管状の骨で中央部の骨幹を体という。
上端は上内側に向けた半球状の頭があり、肩関節の関節頭で前面が関節軟骨で包まれている。
頭と骨端部との境は溝のように深くくびれており、これを解剖頚という。
骨端の上外側部には大結節、その前には小結節があり、その間に結節間溝がある。
上骨端部が体と移行するところはわずかにくびれていてこれを外科頚という。
下骨端部は前後から圧平されて左右に広くなっており、これを上腕骨果という。
上腕骨果は橈側と尺側とに鋭く突出していて、これらをそれぞれ外側上果、内側上果という。
下端の中央部には滑車、その外側に続いて小頭があり、いずれも関節面をなしている。
滑車のすぐ上方には前面に鈎突窩、後面に肘頭窩があって、尺骨の鈎状突起ないし肘頭の先がはまり込むための凹みをなしている。
上腕骨は外科頚、骨幹中央部、内側上果で骨折が起こりやすい。
肩関節の上腕骨頭の脱臼は比較的多い外傷で、下方あるいは前方に脱臼し、腋窩神経を損傷する危険がある。
前方脱臼は関節包や関節唇の損傷を伴う。
1解剖頚 2三角筋粗面 3大結節 4橈骨神経溝 5上腕骨頭 6結節間溝 7大結節稜 8小結節 9小結節稜 10外科頚
◆前腕の骨 Forearm bones
1 尺骨 Ulna
内側にある長い管状骨。
中部は体といい三角柱状をしている。
上部は肥厚し上端の後側には肘頭、前側には鈎状突起があって、その間に滑車切痕をはさんでいる。
下部は細く、その尖端を頭といい、後内側には茎状突起が出ている。
上端
1前縁 2前面 3鈎状突起 4骨間縁 5内側面 6肘頭 7後縁 8後面 9橈骨切痕 10回外筋稜 11滑車切痕 12尺骨粗面
下端
1前面 2尺側手根伸筋が通る溝 3尺骨頭 4骨間縁 5内側面 6後面 7茎状突起
2 橈骨 Radius
外側にあり、尺骨と並んでいる。
骨幹部を体といい、三角柱に近い形をしている。
上骨端部は細いが、その末端は頭として少し肥厚している。
頭の上面は浅いくぼみ、周囲は円くて、いずれも関節面をなしている。
頭のすぐ下部は少しくびれて頚となっており、それよりさらに遠位の前面には橈骨粗面がある。
下骨端部は太くなっていて、遠心面は凹んだ関節面をなしている。
その下外側端の突出部を茎状突起という。
上端
1前縁 2前斜線 3前面 4橈骨頭 5骨間縁 6外側面 7橈骨稜 8後縁 9後面 10円回内筋粗面 11橈骨粗面
下端
1前面 2背側結節 3長母指外転筋が通る溝 4短橈側手根伸筋が通る溝 5長橈側手根伸筋が通る溝 6指伸筋および示指伸筋の通る溝 7短母指伸筋が通る溝 8長母指伸筋が通る溝 9骨間縁 10外側面 11後面 12茎状突起 13尺骨切痕
◆手の骨 Bones of hand
1 手根骨 Carpals
手根部にある小骨で8個ある。これらが4個ずつ2列に並んでいる。
舟状骨 Scaphoid
月状骨 Lunate
三角骨 Triquetrum
豆状骨 Pisiform
大菱形骨 Trapezium
小菱形骨 Trapezoid
有頭骨 Capitate
有鈎骨 Hamate
2 中手骨 Meta carpals
掌部にある管状骨で各指に相当して5本ある。
3 指骨 Phalanges
各指の支柱をなす骨で、母指は2節、他は3節からなっている。
各個の骨を指節骨と名付けそのうち近位のものを基節骨、次を中節骨、遠位のものを末節骨という。
4 種子骨 Sesamoid bone
掌側の腱の中に生じた大豆ぐらいの大きさの骨。
ふつう5個ある。
母指の中手骨の遠位端に2個、母指の基節骨の遠位端に1個、第2および第5中手骨の遠位端にそれぞれ1個ある。
摩擦を減じたり腱を保護する。
1第5中手骨の底 2第1中手骨の底 3中指の中節骨の底 4薬指の基節骨の底 5有頭骨 6薬指の末節骨 7母指の末節骨 8尺骨神経の深枝が通る溝 9有鉤骨 10第5中手骨の頭 11第1中手骨の頭 12中指の中節骨の頭 13薬指の基節骨の頭 14有鉤骨鉤 15月状骨 16有鉤骨・掌側面 17豆状骨 18示指の基節骨 19小指の基節骨 20母指の基節骨 21舟状骨 22第2中手骨の体 23第5中手骨の体 24第1中手骨の体 25中指の中節骨の体 26薬指の基節骨の体 27有頭骨との関節面 28月状骨との関節面 29三角骨との関節面 30大菱形骨 31小菱形骨 32三角骨 33舟状骨結節 34大菱形骨結節 35舟状骨の峡部
◆連結
①体幹と上肢帯の連結
上肢と体幹の連結はわずかに胸鎖関節にあるだけで、その他は筋・皮膚などにより間接的に連結が補強されているにすぎない。
胸鎖関節は胸骨と鎖骨との間の多軸関節で、関節腔に関節円板をもっている。
②上肢帯内の連結
肩甲骨と鎖骨とは肩峰と鎖骨との間にある肩鎖関節によって連結されている。
③上肢帯と上腕骨の連結
これは肩関節である。
肩関節は肩甲骨の関節窩と上肢骨との間にある球関節で、関節窩が浅くて靱帯による束縛が少ない。
そのため諸関節のうちで可動域が最も大きく、最も脱臼の起こりやすい関節である。
肩甲骨の関節窩の周縁部は結合組織性の関節唇で増補されている。
関節唇は⒈関節を深くして関節の適合性をよくする。⒉関節縁を保護する。
関節腔の上半は上腕二頭筋長頭の腱で貫かれている。
④上腕骨と前腕骨の連結
これは肘関節で上腕骨・橈骨・尺骨の間にある関節である。
これに腕尺関節、腕橈関節・上橈尺関節の3部を区別する。
腕尺関節は、上腕骨の滑車と尺骨の滑車切痕との間にある。
腕橈関節は、上腕骨の小頭と橈骨頭との間にある。
上橈尺関節は、橈骨の頭と尺骨の橈骨切痕との間にある。
これらは全体が1つの関節包で包まれて共通の関節腔をもっているから、肘関節と総称される。
肘関節での上腕と前腕との間の運動は主として腕尺部でおこなわれるもので、蝶番関節としての一軸性屈伸運動である。
この場合に腕橈部は単に尺骨に随伴して動くにすぎない。
⑤前腕骨間の連結
上橈尺関節は橈骨頭と尺骨上端の間にあり、下橈尺関節は橈骨の下端と尺骨頭との間にある。
橈骨と尺骨との間には結合組織性の骨間膜があって両骨の結合を補強している。
肘における橈骨の回旋は尺骨を動かすことなくできる。回内・回外運動。
⑥前腕骨と手骨の連結
橈骨手根関節で関節頭は舟状骨・月状骨・三角骨の近位面がつくる凸面であり、関節窩は橈骨の遠位面とその尺側に続く関節円板である。
尺骨は手根骨と直接には関節をいとまない。
⑦手骨間の連結
各手根骨は互いに隣接面によって関節的連結をいとなむものでこれらを総称して手根管関節という。
橈骨手根関節と手根骨間関節とをあわせて手関節という。
ただしこれは便宜上の総称であって、橈骨手根関節の関節腔はふつう手根間関節とは独立しているし、手根間関節の関節腔は互いに連絡しているほかに、手根中手関節とも交通している。
このほか手根中手関節は手根骨と中手骨とを、中手指節関節は各中手骨とそれに所属する指の基節骨とを連結している。
手の指節間関節は各指の指節骨間にある。
中手指節関節は母指を除いては球関節であり、指節間関節は母指の中手指節関節とともに蝶番関節である。