傷が治っていく過程(創傷治癒)は、止血期、炎症期、増殖期、成熟期の4段階。
止血期は、血を止める。
炎症期は、白血球などが、細菌や壊れた組織など異物を取り除く。
増殖期は、新しい組織や血管がつくられる。
成熟期は、瘢痕(傷跡)となって修復される。
前回の炎症期では、白血球やマクロファージが病原体、異物、壊死組織を貪食し処理しました。炎症の後期になると、リンパ球・形質細胞が多く浸潤し、免疫反応を介して病原体の排除に働きました。
今回はその次の増殖期です。
組織の増殖
病原体の除去が一段落すると、炎症反応は落ち着く必要がある。
炎症の収束は、能動的であり、炎症がいつまでも続いてしまうと傷は治癒しない。
炎症を起こすのに、多くの因子が作用したように、炎症を収束するためにも多くの因子が複雑に作用する。
炎症性と抗炎症性に働く物質は、はっきり区別されているわけでなく、ある状態では炎症性に、ある状態では抗炎症性に作用する。
PGE2(プロスタグランジンE2)は、炎症メディエーターの1つだが、免疫系の反応でマクロファージにおいては、抑制的に作用し抗炎症的に働く。
また、マクロファージの働きも多彩であり、炎症性のサイトカインを放出する一方で、抗炎症性のサイトカインも放出する。
炎症性マクロファージと炎症抑制マクロファージの分化のバランスは、健康な状態であれば適切に制御されているが、このバランスが崩れ、炎症性マクロファージが優位となると炎症が続く要因となる。
炎症が落ち着くと、組織の増殖が始まり、損傷を受けた組織や欠損した組織の修復が始まる。
マクロファージや血小板などから産生されるサイトカインや増殖因子を介して、線維芽細胞、血管内皮細胞、上皮細胞などが遊走し、障害部位で増殖する。
線維芽細胞はコラーゲンをつくり、血管内皮細胞は血管をつくり、組織に栄養を与える。
損傷を受けた組織や欠損した組織を線維芽細胞、コラーゲン、毛細血管、白血球などがどんどん埋めていき、できた組織を肉芽組織という。
線維芽細胞の活性型である筋線維芽細胞は、収縮能があり、傷の端を収縮させ傷を小さくするよう作用する。
修復過程が進むと、肉芽組織内の白血球や毛細血管は減少してコラーゲンが増加していく。
細胞増殖にはタンパク質が、コラーゲンの合成にはビタミンCが必要であり、
タンパク質合成に関与する亜鉛も不足すると、創傷治癒が遅延する。
その他、エネルギー不足は代謝が進まず、またタンパク質を分解して利用するため、糖質や脂肪の不足も治癒が遅れる。
その他、鉄不足は組織に運ばれる酸素が低下するため、代謝が落ちる。
ビタミンAもコラーゲン合成に関わり、上皮細胞の正常な分化に必要です。
本日も読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、成熟期です。
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