筋筋膜性疼痛症候群はとくに病理的な原因はないが
慢性的な痛みが限られた場所(例:首だけが痛い)にあり
押すと他の部位へも痛みが放散するという特徴がある
筋肉や筋膜由来の疼痛です。
首以外の筋肉や筋膜にも現れます。
○頚部の筋筋膜性疼痛症候群の特徴
頚部や肩に痛みがあるのはもちろんですが
その他にもトリガーポイントから起こる
関連痛といった痛みも起こることがあります。
頚部の筋肉の関連痛は下記のように広がります。


この他にも、腕や手に広がるものもあります。
○トリガーポイント
筋筋膜性疼痛症候群は筋肉や筋膜のわずかな傷が元になり
トリガーポイントと呼ばれる、痛みを放散する圧痛点が
形成されてしまいます。
筋肉のある点を押すと、他の部分が痛むといった
痛みの引き金となるポイントです。
これはなぜできるかというのは、まだはっきりと解明されてはいませんが
今の時点では、⒈エネルギー危機仮説と2.運動神経終板機能障害仮説
という仮説を合わせた仮説が広がっています。
簡単にいいますと
エネルギー危機仮説というのは、収縮している筋肉を弛緩させるには
エネルギーを必要とします。
そのエネルギーは血液循環によって供給されるのですが
収縮しっぱなしの筋肉は虚血となり、エネルギーが供給されないため
筋肉がさらに収縮し続けるといった仮説です。
運動神経終板機能障害仮説は、運動神経が筋肉に結合する部分の機能障害です。
脳からの指令が運動神経によって筋肉にうまく伝わらないため
異常に筋肉が収縮し続けてしまうという仮説です。
この2つは流れが繋がっているため、合わせて考えられています。
○頚部の筋肉は特に注意
筋筋膜性疼痛症候群では痛みやしびれ、感覚の鈍さなどの他に
⒈自律神経性の機能障害(発汗、過剰な唾液分泌など)
2.固有感覚の乱れ(めまい、平衡感覚の欠如、耳鳴りなど)
といった筋肉とは関係ないような症状が現れることがあります。
その他に
3.睡眠障害(痛みで眠れないなど)
4.むくみ(血液循環が悪くなるなど)
も起こる可能性があります。
頚部の深層筋では、筋紡錘という筋肉の長さや張力を
脳に伝えるセンサーが高密度に存在し
他の部位より情報量が多く伝えられています。
頚部は頭部という特殊な感覚機能を備えた部位を支えるため
安定した姿勢が求められます。
頭部の運動は頸部の筋肉に委ねられるので
この動きが減少すると眼球運動などにも影響があり
筋肉以外の症状が現れることになります。
姿勢を安定させるために視覚や平衡感覚は大きな情報です。
そういったことから、頸椎の筋肉はとても重要な働きをしています。
○頚部筋を痛める要因
筋筋膜性疼痛症候群の主な原因であるトリガーポイントは
筋肉の微小な傷が元で形成されると記述しましたが
その微小な傷は、筋肉の過度の伸張、短縮、負荷などが長引いた時に生じます。
具体的には
①繰り返しの動作(枕の位置、合わない眼鏡、頬杖など)
②急激な動き(むち打ち症、くしゃみや喘息の咳の繰り返しなど)
③ストレスのかかる体位(仕事などの姿勢など)
が挙げられます。
○慢性的な頚部痛の方へ
筋筋膜性疼痛症候群は筋肉や筋膜が少しずつ傷つくことで
痛みを発し、その筋肉が硬くなり硬結ができ
トリガーポイントをつくってしまいます。
臨床では、大抵の方が
筋肉を傷つけるような動作をされた覚えもなく
どうして痛いのかが分からないケースがほとんどです。
でも、例えばご自身のお顔は真っ直ぐでしょうか?
無意識で正面を見た時、傾いていませんか?
お顔が傾いているということは
首の筋肉のどちらかが縮まっていて
どちらかが伸びているということです。
首の構造上、ただ横に傾くということはなく
必ずわずかに捻じれて(回旋)しています。
そしてその状態で、PCを打ち続ければ頭の上下運動が加わり
左右非対称的に負荷がかかるので
どちらか片側の筋肉が傷みます。
短期間であれば、身体には修復する能力があるので
すぐ補修されますが、その作業が追いつかなくなると
筋筋膜性疼痛症候群になっていきます。
原因は多くの場合
日常の動きや姿勢にあることがほとんどです。
無意識にとっている姿勢ですので
意識的に姿勢を変えていく必要はあります。
そのためにすることは、今現在の姿勢やクセなどを客観的にとらえ
どの筋肉が弱く、どの筋肉が硬いのか把握していただき
鍛えるべき筋肉、ストレッチするべき筋肉を
明確にしてもらうことです。
施術はその方の状態により、確認しながら行いますので
そこはそれ以上伸ばせないとか、そうすると痛みが出るなど
体感することで、悪いところが分かると思います。
体感し納得していただければ、ご自宅でもやりやすいと思いますし
予防にもつながります。
そして、出来てしまったトリガーポイントを取り除き
可動域を広げて、動きやすい身体に施術していきます。
筋筋膜性疼痛症候群から色々な不調にもつながる可能性がありますので
慢性的な痛みにお困りでしたら、一度、ご来院してみて下さい。