大腿直筋:Rectus femoris
起始 下前腸骨棘(direct head) 寛骨臼上縁(indirect head)
停止 膝蓋骨底 膝蓋靭帯から脛骨粗面
支配神経 大腿神経L2~4
血管支配 大腿回旋動脈
作用 膝関節伸展 股関節屈曲
速筋:遅筋(%) 61.9:38.1
筋連結 外側広筋 内側広筋 中間広筋 縫工筋 腸骨筋
□特徴
大腿四頭筋中、唯一の二関節筋。
SFL上に位置。
direct head(straight head:直頭)、 indirect head(reflected head:半回頭)の両方とも縫工筋と大腿筋膜張筋の間の陥凹部に付着しているため触れない。
両頭とも剥離すると圧痛がある。
direct headはスポーツによる外傷で、剥離することがある。
indirect headは筋内腱として遠位1/3まで存在し、スポーツによる肉離れで重症になりやすい。
寛骨臼縁上で腸骨大腿靭帯の上から起こり、股関節包前面の安定性に関与。
拘縮で股関節前面に痛みがでる。
大腿四頭筋拘縮症の症状で大腿直筋が障害されると、尻上がり現象が起こる。正座は程度の差がある。
検査:うつ伏せ、膝関節屈曲位 陽性→股関節が曲がりお尻が浮き上がる。
大腿直筋と外側広筋が障害されると、尻上がり現象があり、正座ができない。
直筋型と混合型の歩行の特徴は、脚を外側へ振り回しながら歩いたり、お尻が出た歩行など。
股関節屈曲位を長時間することで、短縮しやすい。
下肢が固定された状態では骨盤を前傾させ、腰椎前弯となる。
股関節屈曲拘縮のテスト→トーマス・テスト
□TP
関連痛は大腿前面、膝蓋骨上部
腸腰筋と大腿直筋の柔軟性が低下すると、膝関節の屈曲が制限されることがある。
背臥位で股関節伸展、膝関節屈曲で、腸腰筋と大腿直筋を一緒にストレッチする。
大腿直筋は日常で完全に伸張されることが少ないため、短縮しやすい。
内側広筋 Vastus medialis
起始 大腿骨転子間線下部 大腿骨粗線内側唇
停止 膝蓋骨内側縁・上縁 中間広筋終腱
支配神経 大腿神経L2~3
血管支配 大腿深動脈 大腿動脈 膝窩動脈
作用 膝関節伸展
速筋:遅筋(%) 47.4:52.6
筋連結 大腿直筋 長内転筋 大内転筋 腸骨筋 中間広筋 恥骨筋
短内転筋 (膝関節包を介して)縫工筋 外側広筋 膝関節筋 足底筋 半膜様筋 膝窩筋 腓腹筋
□特徴
内側広筋斜走線維
起始は広筋内転筋膜を介し大内転筋腱
停止は内側膝蓋支帯や膝蓋大腿靭帯へ移行→側方の安定性に関与・外旋作用を制動
伸展時に膝を内反位に安定させる。
knee-in toe-outのアライメントにおける膝関節の安定化には内側広筋が重要。
線維の角度の違いに注意。下にいくほど大腿との角度が斜め下方から横方向近くなる。
運動方向が変わる。大腿骨内旋で伸張。
股関節内転は大内転筋収縮によって筋連結している内側広筋斜走線維も収縮させることができる。
内側広筋は弱化・委縮しやすい。
大腿四頭筋のバランスが悪くなると膝に内外旋(曲げる伸ばすではなく、捻じる)のストレスを与えてしまう危険性も出てくる。
□MMT
膝関節 【伸展】
神経学的レベル:L2 L3 L4 大腿神経
□TP
関連痛は膝および大腿内側面。
モートン足構造は内側広筋のTPが治りにくい。
※モートン足構造
足の示指の中足骨が通常より長く、示指が拇指よりも長く見えるタイプ。示指が長く見えなくても、中足骨が長い場合もある。足の裏の示指の付け根部が硬くなっている。
拇指よりも示指の付け根が先に地面に着き、拇指が着地することで足首の不安定が生じ、膝も内外側に動き下肢全体が揺れる。
これは腓骨筋に過負荷を与える動きであり、膝関節に痛みを発生するTPを作る。内側広筋を緊張させるので大腿四頭筋にTPがある場合は治りにくい。
外側広筋 Vastus lateralis
起始 大転子外側面 大腿骨粗線外側唇
停止 膝蓋骨外側縁・上縁 中間広筋・大腿直筋終腱
支配神経 大腿神経L3~4
血管支配 外側大腿回旋動脈
作用 膝関節伸展
速筋:遅筋(%) 58.5:41.5
筋連結 大腿直筋 中間広筋 小殿筋 大腿二頭筋短頭 大殿筋 大内転筋
中殿筋 大腿方形筋 大腿筋膜張筋 恥骨筋 少内転筋 (膝関節包を介して)縫工筋 内側広筋 膝関節筋
足底筋 半膜様筋 膝窩筋 腓腹筋 長内転筋
□特徴
BFL上に位置。
外側広筋斜走線維
起始は腸脛靭帯の内面。
停止は外側膝蓋支帯や靭帯へと移行→膝蓋骨の側方安定に関与。
外側膝蓋支帯の緊張は外側広筋に依存しており、外側膝蓋支帯を介したけん引力は下腿の外旋トルクと伸展トルクを発生させている。
膝関節伸展及び下腿の外旋、外転に作用。
外側広筋は短縮しやすい。短縮は膝関節屈曲の最終可動域の制限因子となる。
knee-out toe-inのアライメントにおける膝関節の安定化に役立つ。
治療上のポイント
股関節外転位で腸脛靭帯の緊張が低下する。
大腿四頭筋は長軸方向で観察しがちだが、横軸方向の動きも忘れないこと。
大腿横断面から見た場合、膝関節屈曲で大腿四頭筋は横へ広がる。
大腿四頭筋拘縮症の症状で外側広筋と中間広筋が障害されると、尻上がり現象はないが正座ができない。
歩行に特徴があり、膝を突っ張りながら歩く。
大腿骨を内旋させることで伸張できる。
□TP
関連痛は膝および大腿の外側。
触診時の注意 腸脛靭帯との区別。
中間広筋 Vastus intermedius
起始 大腿骨前面および外側面
停止 膝蓋骨と脛骨粗面
支配神経 大腿神経L2~4
血管支配 大腿動脈
作用 膝関節伸展
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 大腿二頭筋短頭 大腿直筋 内側広筋 外側広筋 大内転筋 大殿筋 膝関節筋
□特徴
膝関節伸展時の貢献度が四頭筋の中で一番高い。
大腿四頭筋の弱化で、膝崩れを起こす。膝崩れは歩行時の荷重応答期に遠心性に収縮しながらゆっくりと膝関節屈曲に移ることが出来ず、崩れるように膝が曲がってしまう。膝崩れの原因は大腿四頭筋の弱化だけではない。
大腿四頭筋の筋力低下は関節軟骨や半月板を損傷しやすい。歩行時の膝関節の衝撃吸収が弱いため。
中間広筋の深部に膝関節筋があり膝蓋上包に繋がっているため、中間広筋の収縮が膝蓋上包にも影響する。
膝関節疾患の術後や炎症が起こると滑液包自体が肥厚や線維化してしまう。これは膝関節屈曲制限にもなる。
また滑液包の線維化で、滑液循環が悪くなり、滑液生成や吸収のバランスが崩れ滑液の質や量にも影響がでる。
膝関節に”きしみ感”を感じる。
大腿直筋への選択的抑制→中間広筋を収縮させることで癒着を防止する。
□TP
関連痛は鼠径部外側から大腿前上部。
膝関節筋 Articularis genus
起始 大腿骨下部前面(中間広筋から分岐)
停止 膝蓋上包
支配神経 大腿神経L2~4
血管支配 大腿動脈
作用 膝関節伸展
□特徴
中間広筋の深層に位置。
中間広筋と膝関節筋の間に膝蓋上包が存在している。
膝蓋上包は膝蓋骨の上方、大腿四頭筋の下にある滑液包。
膝関節関節腔と交通している。この滑液包は大腿四頭筋と大腿骨の間で長く延びる袋状である。
膝関節屈伸でキャタピラのように移動することで、膝蓋骨がスムーズに超軸方向へ移動出来る。
内側広筋の線維が膝蓋上包に直接付着している。
膝蓋伸展時、収縮することによって膝蓋上包は上方に引っ張られ延びて二重の膜状(中間広筋と膝関節筋)になり、屈曲すると膝蓋骨が下方に滑り込み1つの膜(中間広筋)になる。
関節腔内での滑液は、膝関節屈曲時、滑液包の後方は弛緩するが、膝蓋上包は大腿四頭筋により(膝関節筋弛緩で)押し潰される。→滑液は後方へ。
膝関節伸展時、膝蓋上包は上方に引っ張られ、膝関節筋が緊張し滑液包の後ろは腓腹筋により圧迫され押し潰される。 →滑液は前方へ。
滑液は関節腔内を絶えず循環している。
炎症により膝関節筋が癒着してしまう。→膝関節の屈曲・伸展機構に障害を起こす。拘縮の問題。
膝関節屈曲制限を起こす膝蓋上包の癒着。
癒着部位は①膝蓋上包の前後 ②膝蓋上包と大腿骨間の脂肪体
膝関節に水が溜まると膝が曲がらなくなる。これは膝蓋上包内に滑液で充満すると、膜が押し上げられて長さが足りなくなるため。
癒着予防や剥離操作には、大腿四頭筋を掴んで持ち上げ、大腿骨と引き離すようにする。
膝前面の痛みの原因にもなる。膝蓋骨上方に痛みがある時は、押圧してみる。
膝関節筋の収縮機能が低下すると、膝関節伸展時に膝蓋上包を引き上げられず骨膜のインピンジメントを起こす。
圧痛が無い場合もある。
膝関節筋を収縮させるには、伸展制限を取り除くため膝関節周囲の組織の癒着を取り除く。
そして大腿四頭筋セッティングを行う。膝蓋骨を上方に引き上げることで収縮できるようになる。
術後や外傷で膝関節に炎症がある時は、癒着が進行しやすい。在宅トレーニングもすすめる。
※大腿四頭筋筋力訓練:Quad setting
膝の下に丸めたバスタオルを置く。
仰向けで横になる。
つま先をしっかり上に向ける。
膝の裏でタオルをぐっと押し込む。
この状態で5秒間保持する。
※膝関節の内側の筋が働いていることを確認
※膝が浮いたり、体を反らしたりしない
これを20回1セットで1日2セットを目標とする。
関節をあまり動かさず、筋力量は多く使うので、変形性膝関節症や膝に痛みがあっても、筋力低下が進まないよう訓練できる。