前斜角筋 Scalenus anterior
起始 C3~6横突起前結節
停止 rib1前斜角筋結節(リスフラン結節)
神経 頚神経叢 腕神経叢C4~7
作用 両側:屈曲 片側:同側側屈
血管 下甲状腺動脈
筋連結 肩甲挙筋 中斜角筋
下方に頂点をもつ三角形状であり、C3~6の横突起前結節から起きている。
筋は収束して1本の腱となり、第1肋骨の上面の斜角筋結節に付着している。
筋全体として斜め前下外側に走っている。
中斜角筋 Scalenus medius
起始 全頸椎横突起前結節
停止 rib1鎖骨下動脈溝後方隆起
神経 頚神経叢 腕神経叢 C2~8
作用 両側:屈曲 片側:同側側屈
血管 上行頸動脈
筋連結 肩甲挙筋 前斜角筋
前斜角筋の深層と接しつつ、C2~7の横突起後結節とC2~6の横突起の溝のような凹みの外側縁とC7の横突起から、腱索をもって起きている。
この中斜角筋は、前後方向に平たく下方に頂点がくる三角形状である。
また、この筋は斜め下外側やや前方に走行し、鎖骨下動脈のための溝があるところより少し後方の第1肋骨の上面に付着する。
後斜角筋 Scalenus posterior
起始 C4~7横突起後結節
停止 rib2外側面
神経 腕神経叢 C5~8
作用 両側:屈曲 片側:同側側屈
血管 下甲状腺動脈 頚横動脈
筋連結 肩甲挙筋 中斜角筋
他の2つの斜角筋より後方に位置する。
3本の腱索をもって、C4~6の横突起後結節から起こる。
それは横方向に平らで中斜角筋の外後方に位置し、一部は中斜角筋と一緒になる。
また、平たい腱となって第2肋骨の上外側縁に付着する。
□特徴
斜角筋群は頸椎の横突起から起こり、下外方に下って第1および第2肋骨に付く。
胸部の肋間筋と同系の筋群であるが、頸部では肋骨が退化した結果、このような形態と経過を示すようになったものである。
前斜角筋と中斜角筋との間には、第1肋骨の上縁を底とする三角形の隙間(斜角筋隙)があり、腕神経叢の根と鎖骨下動脈がここを通る。
鎖骨下静脈は前斜角筋の前を通る。
両側の斜角筋が収縮すれば頸椎は屈曲し、もし頚長筋が収縮によって頸椎がしっかり固定されていないと、頸椎前弯が増強される。
また、頚長筋が頸椎をしっかり固定していれば、頸椎を屈曲させるのみである。
一側の斜角筋が収縮すれば、その側に頸椎は側屈回旋する。
斜角筋の頸椎への付着を固定すれば、上位の2本の肋骨が挙上される。
このことにより、斜角筋は吸気の補助筋としても作用することになる。
・後頚三角
後頚三角は椎前葉(深頚筋膜)で覆われた筋群で構成される。
そこは、胸鎖乳突筋と僧帽筋に囲まれた領域である。
各々の筋は頭蓋骨や頸椎から始まる。
すなわち、そこから下降し第1と第2肋骨(斜角筋)、肩甲骨の上部(肩甲舌骨筋、肩甲挙筋)および頸椎や胸椎の棘突起(頭板状筋、頭半棘筋)に停止する。
胸鎖乳突筋と斜角筋群は、頸部の運動の他に強制吸息時に胸郭拡大に補助的作用をする。
呼吸運動には胸郭の筋の他に多くの筋が補助的な作用を果たしている。
斜角筋群は第1・2肋骨の挙上。
□特殊な検査
【アドソンテスト】
このテストは、圧迫された鎖骨下動脈の状態を見るために行う。
動脈が上肢へ走行する途中で時に頚肋や緊張した前斜角筋、中斜角筋間を通り、その部で動脈が圧迫されることがある。
アドソン・テストを行うには、手関節の橈骨動脈の脈をとる。
脈をとりながら肩関節を外転、伸展、外旋させる。
次にテストする側に顔を向け深呼吸させる。
鎖骨下動脈に圧迫があれば、橈骨動脈の脈の顕著な減弱もしくは消失を認める。
□TP
関連痛パターン:頸部 胸部 肩甲骨内縁 上腕前面および後面 前腕の橈骨側
示指および母指
TP:頸椎横突起に向かって平圧法を行う。
母指あるいは他の四本の指を使う。
指が胸鎖乳突筋の後ろを加圧するように気をつける。
後斜角筋は母指を使えば治療できる。
頸部の高速な運動で胸鎖乳突筋と斜角筋が損傷する(鞭打ち症)。
喘息などの呼吸困難を伴う疾患は前斜角筋を過度に収縮させることがある。
頸部前傾姿勢からくる胸鎖乳突筋の緊張と斜角筋の弛緩も筋筋膜のアンバランスにつながる。
胸鎖乳突筋も同時に罹患することが多いので、当時に治療する必要がある。
姿勢による胸椎のアンバランスがみられるときは、それも矯正すること。