浅胸筋
胸筋の表層をなし、胸部の皮膚のすぐ下層にある。
本来、いずれも上肢筋であって、胸郭の前壁から起こって上肢に付き、上肢の運動を営む。
腕神経叢の枝に支配されている。
大胸筋 Pectoralis major
鎖骨部
起始 鎖骨内側1/2
停止 上腕骨大結節稜
神経 内側・外側胸筋神経 C5~T1
作用 屈曲 水平内旋・内転・屈曲 上腕が固定されている時は、肋骨を上にあげる。
血管 胸肩峰動脈 最上胸動脈 外側胸動脈 前上腕回旋動脈 内胸動脈
筋連結 大胸筋胸肋部 大胸筋腹部 広頚筋 広背筋 三角筋 上腕二頭筋 小胸筋 上腕三頭筋 腹直筋 対側大胸筋鎖骨部
胸鎖乳突筋 (肩関節包を介して)小胸筋 棘上筋 棘下筋 小円筋 肩甲下筋 上腕二頭筋 上腕三頭筋
大胸筋胸肋部
起始 胸骨及び第2~7肋軟骨前面
停止 上腕骨大結節稜
神経 内側・外側胸筋神経 C5~T1
作用 内転 水平屈曲・内転・内旋 上腕が固定されている時は、肋骨を上にあげる
血管 胸肩峰動脈 最上胸動脈 外側胸動脈 前上腕回旋動脈 内胸動脈
筋連結 大胸筋鎖骨部 大胸筋腹部 広頚筋 広背筋 三角筋 上腕二頭筋 小胸筋 上腕三頭筋 腹直筋 対側大胸筋胸肋部
胸鎖乳突筋 (肩関節包を介して)小胸筋 棘上筋 棘下筋 小円筋 肩甲下筋 上腕二頭筋 上腕三頭筋
大胸筋腹部
起始 腹直筋鞘前葉
停止 上腕骨大結節稜
神経 内側・外側胸筋神経 C5~T1
作用 内転 水平屈曲・内旋・内転 肩を下げる時に働く
血管 胸肩峰動脈 最上胸動脈 外側胸動脈 前上腕回旋動脈 内胸動脈
筋連結 大胸筋鎖骨部 大胸筋胸肋部 広頚筋 広背筋 三角筋 上腕二頭筋 小胸筋 上腕三頭筋 腹直筋 対側大胸筋腹部
胸鎖乳突筋 (肩関節包を介して)小胸筋 棘上筋 棘下筋 小円筋 肩甲下筋 上腕二頭筋 上腕三頭筋
□特徴
胸部の際表層にある強大な筋で、鎖骨、胸骨と上位の肋軟骨、腹直筋鞘の3部から起こり、上外方に集まって上腕骨の上端前面(大結節稜)につく。
広背筋と大胸筋の下縁は、腋部において体幹と上腕との間に防波状に隆起し、その間に腋窩をつくっている。
SFL、FFL、SFAL上にある。
□軟部組織の触診
大胸筋はしばしば先天的にこの筋の全体もしくは一部の欠損が認められることで臨床上重要である。
鎖骨外側陥凹部の起始部端では三角筋大胸筋溝の内縁が明瞭となる。
大胸筋を停止部方向へ触診していくと結節間溝をこえ、大結節稜へ付着している。
この部に圧痛があれば筋自体の痛みか結節間溝の痛みかを明らかにする。
□筋力テスト
鎖骨部:背臥位。手のひらをグーにして上肢を内旋させる。屈曲90度で斜め内方下方に力を入れてもらう。
胸肋部:背臥位。指を伸ばし上肢を内旋させる。屈曲90度で斜め外方上方に力を入れてもらう。
上腕二頭筋の代償作用が起こらないようにする。
□TP
関連痛パターン:胸部 肩 上腕と前腕の内側
TP:前腋窩ヒダ
丸めた肩や大胸筋の緊張を伴った上頸部症候群、長時間の座位や重い物の持ち上げ、呼吸が浅い喘息などの呼吸器疾患で損傷する。
大胸筋に異常があると、小胸筋でも筋筋膜トリガーポイントの活動性が起こることがある。
小胸筋 Pectorais Minor
起始 第2(3)~5肋骨前面
停止 肩甲骨烏口突起
神経 内側胸筋神経 C7~8
作用 肩甲骨下制 下方回旋 外転 肩甲骨が固定されている時は肋骨を挙上する
血管 胸肩峰動脈 外側胸動脈 内胸動脈
筋連結 大胸筋 烏口腕筋 内肋間筋 (肩関節包を介して)大胸筋 棘上筋 棘下筋 小円筋 肩甲下筋 上腕二頭筋 上腕三頭筋
□TP
関連痛パターン:胸郭上部 肩前部 上腕内側
TP:鎖骨中央部を第3肋骨まで下がったところ。鎖骨外側3分の1のところの3横指下
鎖骨下筋 Subclavius
起始 第1肋骨胸骨端
停止 鎖骨中央下面
神経 鎖骨下筋神経 C5~6
作用 鎖骨下制
血管 胸肩峰動脈
□TP
関連痛パターン:鎖骨部 上腕二頭筋および前腕部
TP:胸骨胸鎖関節の2横指外側
直接的外傷、鎖骨骨折で損傷する
鎖骨の上方への回旋を補助する時には、慎重に穏やかに行う
前鋸筋 Serratus anterior
起始 第1~9肋骨側面 第1・2肋骨とその間の腱弓
停止 肩甲骨内側縁 上角及び下角の肋骨面
神経 長胸神経 C5~8
作用 肩甲骨外転 上方回旋 肩甲骨の下角を上外方に引き、肩甲骨が固定されていると、肋骨を引き上げる
血管 頚横動脈深枝(下行肩甲動脈) 最上胸動脈 胸背動脈
筋連結 外腹斜筋 大・小菱形筋 肩甲挙筋
□特徴
肋骨から起こるところが、外腹斜筋の起始部とかみ合って鋸歯状を呈するためこの名がある。
この起始部は皮膚の表面からもよく見えるので、美術解剖学では重要である。
SPL上。
□軟部組織の触診
前鋸筋の触診は腋窩内壁の触診の際に行う。
第1~8肋骨に沿って前鋸筋を触診すると鋸状になっているのに注意する。
前鋸筋は胸壁に肩甲骨内側縁を固定することによって、肩甲骨が翼状となることを防ぐ役割を果たしている。
□筋力テスト
肩甲骨の上方移動運動(腕を前方へ伸ばす運動)
肩甲骨の外転は、肩甲骨の胸郭に沿っての前方への動きであり、とくに手を伸ばす際の最後に見られる動きである。
床面に平行に肩関節を90度屈曲してもらい、さらに肩関節に手が届くように肘関節を曲げる。
施術者は一方の手を患者の脊椎上に置くことにより、患者の体幹の安定を図り、また体幹の回旋による代償運動を防いで、真の肩甲骨の突き出しが出来るようにする。
施術者の抵抗を加える手は患者の肘関節の下部を手掌を包むように保持する。
次に患者に曲げた肘関節があたかも壁を触るように前方へ伸ばすようにしてもらう。
患者の肩甲骨の外転に従い、施術者は最大抵抗まで徐々に抵抗を増してゆく。
この検査の間、翼状肩甲が生じないか調べる。
この場合、翼状肩甲になるのは前鋸筋の筋力低下による。
筋力低下は壁押しやプッシュアップ動作でも明らかになる。