大腰筋 Psoas major
起始 第12胸椎椎体および第1~4腰椎の椎体・肋骨突起
第1~5腰椎肋骨突起
停止 大腿骨小転子
神経 腰神経叢と大腿神経の枝 T12~L4
作用 股関節屈曲 骨盤前傾
血管 肋下動脈 腰動脈 腸腰動脈 内側大腿回旋動脈
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 腸骨筋 横隔膜 腰方形筋 最長筋 腸肋筋 (股関節包を介して)腸骨筋 小腰筋 恥骨筋 小殿筋 梨状筋 外閉鎖筋
□特徴
体幹の外側筋群の1つ(もう一つは腰方形筋)。
腰方形筋の前にあり、その紡錘形をした筋腹は2つに分かれる。
後方の筋層は腰椎横突起に起始し、前方の筋層は第12胸椎と腰部椎体に起始する。
前方の筋層は隣接する2つの腰椎上縁および下縁、さらに椎間板外側縁に付着する。
腱様のアーチが、これらの分れた筋付着部上をまたがっている。
紡錘形をした腰筋は前後方向に平たく、下外側方に斜走し、骨盤上峡部の縁に沿って腸恥隆起の前縁に付着する。
されには、腸骨筋と合して小転子尖端に達する。
大腿骨が固定され股関節がほかの関節周囲筋の収縮により安定すれば、腰筋は腰椎に対して非常に強力な効果を持つようになる。
その上、腰部彎曲の頂点に付着しているため、骨盤に対して脊柱の側屈をもたらし、下肢を安静にし背臥位になった時見られるような腰椎前弯を強める。
全体的にみれば、体幹の外側の筋群は体幹を同側方に屈曲するが、腰方形筋には腰椎を前彎させる作用はなく、腰筋が腰椎の前彎を強調させ、されに脊柱を反対方向に回旋させている。
DFL上
□筋力検査
仰臥位。患側と反対側に立つ。患側の股関節を外転、外旋、わずかな屈曲。
間接手はASIS。直接手は患側大腿遠位部。
斜め下方へ向けて押す。抵抗してもらう。
小腰筋 Psoas minor
起始 上位腰椎の椎体
停止 腸骨筋間に放散 恥骨櫛
40~50%で欠損
腸骨筋 Iliacus
起始 腸骨上縁 内面
停止 大腰筋内側 大腿骨小転子
神経 腰神経叢と大腿神経の枝L2~S2
作用 股関節屈曲
血管 腸腰動脈 深腸骨回旋動脈
速筋:遅筋(%) 50.0:50.0
筋連結 大腰筋 腰方形筋 内閉鎖筋 上双子筋 下双子筋 縫工筋 大腿直筋 内側広筋 大腿筋膜張筋 恥骨筋
(股関節包を介して)大腰筋 小腰筋 小殿筋 梨状筋 外閉鎖筋
□股関節の神経学的検査
腸腰筋(大腿神経L1、2、3)
腸腰筋は膝関節の手術によって2次的に筋力低下することがある。
また、結核菌やブドウ球菌による膿瘍によっても筋力低下を生じることがある。
□TP
TP:大腰筋→大腿動脈の2横指外側で、鼠径靭帯の1横指下。
腸骨筋→腸骨稜前面で上前腸骨棘の直上。
大腰筋腹腔内ポイント→上前腸骨棘と腸骨体の中線との間。
関連痛パターン:腰椎部に疼痛
転倒、スポーツ外傷、極端に腰を落とした姿勢あるいは車を運転して股関節を長時間屈曲していた時やペダル操作で股関節屈筋群を繰り返し使ったときに腸腰筋が過度に収縮して損傷する。
腰椎椎間板ヘルニア、脊柱側弯症、腰椎固定術なども腸腰筋にトリガーポイントを発生させることがある。
腸腰筋は陰部大腿神経を絞扼し、陰嚢部あるいは陰唇部に知覚異常をもたらすことがある。
また、外側大腿皮神経の絞扼にも関与して知覚異常性大腿神経痛の原因となっていることもある。
□トーマス・テスト
股関節屈曲筋の硬さの検査。股関節の屈曲角を知る目的でも利用される。
陽性-大腿の挙上または膝が診察台から浮き上がる。
①腸腰筋スパズム―股関節屈曲位。膝関節屈曲位。
②大腿直筋スパズム―股関節屈曲位。膝関節伸展位。
③縫工筋スパズム―股関節屈曲・外旋・外転位。膝関節屈曲位。
股関節の不十分な動きを補うために腰椎や骨盤の動きで代償することがある。
代償運動の発現を防ぎ正確な股関節の可動域を知るためにはテストを通じて骨盤を固定する必要がある。
【腸腰筋】
□軟部組織の触診
腰筋滑液包は腸腰筋の深部にあり、滑液包に炎症が生じると腸腰筋の緊張が高まり、鼠径部に疼痛を生じることがある(変形性股関節症ではしばしば腰筋滑液包に炎症を生じる)。
腰筋の異常緊張は股関節の屈曲変形をきたす。